共同親権とはどのような制度か?
親権問題2026年4月1日、日本の離婚制度に大きな変化が生まれました。明治時代から100年以上にわたって維持されてきた「離婚後は単独親権のみ」という原則が見直され、父母が合意すれば離婚後も双方が親権を持ち続ける「共同親権」を選択できるようになりました。
この改正は、離婚を検討している方・すでに離婚した方・子どもを持つすべての方にとって、無関係ではありません。「共同親権って何?」「選ばなければならないの?」「自分の場合はどちらが良いの?」——こうした疑問を持つ方が急増しています。
本記事では、共同親権制度の基本的な仕組み・単独親権との違い・どちらを選ぶべきかの考え方・共同親権の運用で問題になりやすい場面と弁護士の役割まで、わかりやすく解説します。
目次
① そもそも「親権」とは何か
共同親権を正しく理解するために、まず「親権」そのものについて確認しておきましょう。
親権とは、未成年の子どもを養育・監護し、その財産を管理するために親が持つ法律上の権利と義務の総称です。親権は大きく「身上監護権」と「財産管理権」の2つに分けられます。
身上監護権
子どもを手元で養育し、日常の世話をする権利です。子どもがどこに住むか(居所指定権)・どの学校に通うか・医療をどう受けさせるかといった、子どもの生活全般に関わる決定を行う権限が含まれます。日常の子育てに最も直結する部分です。
財産管理権
子どもが所有する財産を管理し、子どもに代わって法律行為を行う権利です。子ども名義の預貯金の管理・各種契約の代理・未成年後見的な判断が含まれます。
婚姻中は父母がこの2つの権利を共同で行使しています。そして離婚すると、これまでは必ず父母のいずれか一方だけが持つ「単独親権」に移行する必要がありました。2026年4月以降は、これに加えて「共同親権」という選択肢が加わった形になります。
② 改正前と改正後——何がどう変わったか
2026年3月31日までは、離婚する際に父母のどちらかを親権者として定めることが法律上の義務でした。どちらが親権者になるかを決めずに離婚届を出すことはできず、親権者でなくなった方の親は、法的な意味での「親権行使」ができなくなっていました。
2026年4月1日の改正民法施行後は、父母の合意によって「共同親権」を選択することができるようになりました。合意できない場合は家庭裁判所が判断します。
| 改正前(〜2026年3月) | 改正後(2026年4月〜) |
| 離婚後は必ず単独親権 | 単独親権か共同親権かを選択できる |
| 親権者でない親は法的決定権なし | 共同親権なら双方に決定権が残る |
| 親権者変更には家庭裁判所の手続きが必要 | 親権者変更に家庭裁判所の手続きが必要なのは変わらないが、共同→単独・単独→共同への変更申立ても可能 |
| 離婚届に父母いずれか一方のみ親権者の記載が必須 | 共同親権の場合は双方の親が記載される |
| 📌 ポイント:2026年4月以前に離婚して単独親権を定めていた方も、施行後に家庭裁判所へ親権者変更の申立てを行うことで、共同親権への変更を求めることは可能です。
ただし、自動的に変わるわけではなく、調停による合意又は審判が必要です。 |
③ 共同親権のメリットとデメリット
共同親権が新しく選べるようになったことで、「どちらを選ぶべきか」という判断が求められるようになりました。まずメリットとデメリットの両面を整理しておきましょう。
共同親権のメリット
- 離婚後も父母の双方が子どもの重要な意思決定に関与できる
- 子どもにとって、両親が自分の人生に関わり続けるという安心感につながりやすい
- 養育費の支払いや親子交流(面会交流)が維持されやすいという側面がある
- 一方の親が独断で子どもの将来を左右するような決定をすることを防ぐチェック機能になる
共同親権のデメリット・注意点
- 子どもの進学・転居・重大な医療行為について、元配偶者との合意が必要な場面が生じる
- 父母の意見が対立した場合、決定が遅れたり、家庭裁判所の手続きが必要になったりすることがある
- 離婚後も継続的に連絡・協議が必要なため、関係が悪化している場合は大きなストレスになる
- DV・虐待のある関係では、共同親権の場合、被害者が加害者と連絡を取り合う必要が生じ、リスクがある
④ 共同親権と単独親権——どちらを選ぶべきか
共同親権か単独親権かの選択は、「子どもの利益」を最優先に考えて判断することが法律の求めることです。どちらが正解ということはなく、それぞれの家庭の事情によって最適な選択肢は異なります。
共同親権が向いているケース
離婚後も父母が比較的冷静に話し合える関係であること、子どもが両親のどちらとも良好な関係を持っていること、双方に子どもの養育に積極的に関わる意思があること——こうした条件が揃っている場合には、共同親権が子どもの利益になりやすいと言えます。
特に、「離婚後も子どもの教育や医療に関わり続けたい」という親の気持ちがある場合、共同親権はそのニーズに応える制度です。
単独親権が向いているケース
相手方からDV・モラハラ・虐待を受けていた場合、または今後も受けるおそれがある場合は、共同親権を選ぶことで被害者が加害者と継続的に連絡・協議を余儀なくされるリスクがあります。こうしたケースでは、単独親権を選ぶことが子どもと自分の安全を守ることに直結します。
また、相手が子育てに全く関与しておらず、連絡も取れない・取りたくないという状況では、共同親権を選んでも実質的に機能しない上に、緊急時の意思決定に支障が出るリスクがあります。
家庭裁判所が判断する場合
父母の協議で合意できない場合は、家庭裁判所が共同親権か単独親権かを決定します。裁判所は「子どもの利益」を最優先の基準として、以下の事情を考慮します。
| 必ず単独親権になるケース(民法819条7項) | 左記以外の場合の主な考慮要素 |
| 子どもへの虐待のおそれがある | 父母それぞれの養育態度・これまでの関与状況 |
| 一方の親から他方へのDVがあった | 子どもの意向・心情(特に年長の子どもは重視) |
| 共同して親権行使することが困難な場合 | 父母間で最低限の意思疎通ができる関係かどうか |
⑤ 共同親権の下での「単独行使」と「合意が必要な場面」
共同親権を選んだ場合、すべての育児判断に元配偶者の合意が必要になるわけではありません。民法824条の2は、「監護教育に関する日常の行為」については単独で親権を行使できると定めています。
問題になるのは子どもの将来や生活環境に重大な影響を与える事項です。これについては父母双方の合意が必要とされます。この区別を正確に理解しておくことで、共同親権への不安を大きく軽減できます。
| 単独で行使できること | 父母の合意が原則必要なこと |
| 食事・服装・日常生活の習慣 | 子どもの居所の変更・転居 |
| 通塾・習い事・日常の医療(予防接種など) | 進学先の決定(公立・私立・転校など) |
| 短期間の旅行・学校行事への参加 | 心身に重大な影響を与える医療行為(手術など) |
| DVや虐待から逃げるための緊急転居 | 子ども名義の預貯金の開設・出金・財産処分 |
| 💡 共同親権を選んだ場合でも「監護者」を指定することができます。
監護者に指定された親は、日常的な監護教育や居所の指定を単独で行えます。 離婚の際に監護者を定めておくことで、日常生活のトラブルを大幅に減らすことができます。 |
⑥ 共同親権の運用で生じやすい問題と弁護士の役割
共同親権は2026年4月に始まったばかりの制度であり、実際の運用がどうなるかはこれからの裁判例の積み重ねによって具体化していく段階です。しかし、制度の性質上、すでにいくつかの問題が生じやすいことが予想されています。そのような場面でこそ、弁護士のサポートが大きな意味を持ちます。
問題① 転居・転校について相手が同意しない
仕事の都合・実家への帰省・子どもの学校環境の改善などを理由に転居が必要になっても、相手が同意しない場合があります。この場合、家庭裁判所に「特定事項の親権行使者の指定」を申し立てることで、転居についての決定権を自分に帰属させることができます。弁護士は申立書の作成・転居の必要性を示す主張の整理・裁判所との交渉を代理します。
問題② 緊急の医療や受験手続きで相手に連絡がつかない
子どもが急病になったとき・受験の合格後に入学手続きの期限が迫っているときなど、緊急の判断が必要な場面で相手と連絡が取れない状況は十分に起こりえます。民法上、「急迫の事情」がある場合は一方が単独で行動できるとされていますが、「緊急かどうか」の判断が争われることもあります。弁護士は事前の対応方針の取り決めや、紛争が生じた際の交渉・申立てをサポートします。
問題③ 意見対立が繰り返されて子どもの生活が不安定になる
進学・習い事・医療方針など、様々な場面で意見が合わず繰り返し対立が続くと、子どもの生活が不安定になります。こうした状況では、家庭裁判所への調停申立てや「監護者の指定」「監護の分掌」といった手続きを通じて、どちらが主に養育を担うかを明確にすることが有効です。弁護士は調停・審判での代理人として、依頼者の主張を法的に整理して代弁します。
問題④ DV・モラハラがある関係での共同親権
DV・モラハラの加害者と「共同親権者」として子どものことについて話し合い続けることは、被害者にとって精神的に大きな負担であり、場合によっては新たな支配の手段になりかねません。こうした状況では、単独親権への変更申立て・保護命令の申立て・連絡を弁護士に一元化することで被害者を守る方法を検討することが必要です。
問題⑤ 離婚後に一方が単独親権への変更を求めてきた
共同親権で離婚した後に、一方が「やはり単独親権に変えたい」と申し立ててくるケースも想定されます。また逆に、単独親権で離婚した側が「共同親権にしたい」と申し立ててくる場合も、2026年4月以降は増えると予想されます。こうした申立てへの対応も、弁護士のサポートが不可欠です。
⑦ よくある質問
Q. 今は単独親権で離婚が成立していますが、共同親権に変更できますか?
- はい、可能です。2026年4月の改正民法施行後、家庭裁判所に親権者変更の申立てをすることで、単独親権から共同親権へ変更を求めることができます。ただし、変更が認められるためには「子どもの利益」に適うことが必要であり、申立てをすれば自動的に認められるわけではありません。相手が反対している場合は調停・審判を経ることになります。
Q. 共同親権を選ぶ場合、離婚届にはどのように記載するのですか?
- 改正後の離婚届には、「共同親権」か「単独親権(父または母のどちらか)」かを選ぶ欄が設けられています。共同親権を選ぶ場合は双方が記載します。ただし、協議離婚の場合は父母双方の合意が前提であり、一方だけが共同親権を望んでも、相手が同意しなければ協議離婚では共同親権になりません。その場合は調停・審判を経ることになります。
Q. 子どもが複数いる場合、一人は共同親権・もう一人は単独親権にすることはできますか?
- はい、子どもごとに異なる親権の形を定めることは法律上可能です。子どもの年齢・それぞれの親との関係・子ども自身の意向などを考慮して、各子どもの利益に最適な形を検討することが重要です。子どもが複数いる場合は特に、各子どもの事情を個別に丁寧に分析する必要があります。
Q. 相手がDV加害者ですが、相手から共同親権を求めて調停を申し立てられました。どうすればいいですか?
- 急いで弁護士に相談してください。DVがある場合、家庭裁判所は単独親権を定めることが法律上義務づけられています(民法819条7項)。相手がDV加害者であることを示す証拠(診断書・相談記録・録音など)を整理し、調停の場でその事実を適切に主張することが重要です。弁護士が代理人として参加することで、依頼者本人が相手と直接顔を合わせることなく手続きを進めることができます。
まとめ
共同親権制度は2026年4月に始まったばかりであり、実際の運用はこれから積み上げられていく段階です。本記事の要点を振り返ります。
- 2026年4月から、離婚後の親権は「単独親権」か「共同親権」かを選べるようになった
- 共同親権では父母双方が重要な決定に関与できるが、意見対立時の解決手続きが必要になる
- DV・虐待がある場合は共同親権は認められず、裁判所は単独親権を定める
- 共同親権でも「日常の監護教育」は監護者が単独で決められる——すべてに合意が必要なわけではない
- 転居・進学・医療・意見対立など、共同親権の運用では様々な場面で弁護士のサポートが有効になる
- 離婚前から弁護士と一緒に「監護者の指定」「対立時のルール」「連絡方法」を取り決めておくことがトラブル防止の鍵
「共同親権と単独親権、自分のケースではどちらが良いのか」「相手から共同親権を求められているが、DVがあって不安」——こうした状況でも、弁護士が個別の事情を踏まえた具体的な方針をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。




